Hiroto Lab

Grad. Sch. Human and Environmental Stud. Kyoto University
Japanese / English

研究概要

新規な三次元π共役分子の創成と機能創出

ポルフィリンやアントラセンに代表されるπ共役分子はその構造に応じ、優れた光化学・電気化学特性を示すことから、有機ELや太陽電池などの有機材料への応用が盛んに研究されています。これらπ共役分子の多くは平面構造でしたが、我々は三次元の立体的な構造をもつπ共役分子を新たに合成し、三次元π共役分子のもつ立体的な構造を活かした、従来の平面π共役分子にはない新たな性質・機能の創出を見出しています。

曲面をもつπ共役分子の創成

我々は曲面構造をもつπ共役分子の合成を行い、その曲面構造に因んだ平面の分子にはない新たな特性を解明することを目的に研究しています。
曲面はπ共役分子において歪みのある不安定な構造であり、その合成はとても困難です。一方、我々はスタンダードな反応を用いて様々な構造をもつ曲面π共役分子の創成に成功しています。

螺旋構造をもつπ共役分子の合成と機能開拓
螺旋構造をもつπ共役分子「ヘリセン」は古くから知られている歴史ある曲面π共役分子です。我々は、優れた発光と円偏光発光を併せて示すヘリセンを短行程で合成する手法の開発に成功しました。この反応はバッチスケールで迅速に行えるため、幅広い応用が可能です。

Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 10333-10336.
Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 5740-5743.

8の字構造をもつ分子の合成にも成功しています。


Org. Chem. Front. 2017, 4, 664.

一回転捻れたポルフィリンの合成にも成功しています。これまで報告された縮環π共役分子系の中で最大のねじれ角をもつ分子です。


J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 142-145.

世界初の"ボウル"分子の合成

ボウル構造をもつπ共役分子「バッキーボウル」はフラーレンやカーボンナノチューブ合成の鍵出発物質として古くから研究されてきました。その中で、我々は最近、窒素元素を内部に含む世界初のバッキーボウル「アザバッキーボウル」の合成に成功しました。
Natureaia.comによる紹介記事


ボウル✖️ボール?
アザバッキーボウルは窒素元素の性質と曲面構造の性質の両方を併せ持ち、フラーレンとこれまでになく強く相互作用することを発見しました。この性質を利用し、超分子ポリマーの形成や二光子吸収特性の発現など、これまでの平面分子にはない曲面π共役分子ならではの機能の創出に成功しています。これらは、三次元メモリやがん治療など医療応用といった次世代のナノ材料へと発展できる可能性を秘めており、工業的・社会的にも注目度の高い研究です。

Nat. Commun. 2015, 6, 8215; J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 4649–4655.
J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 6336–6342.

押せる!?分子の開発

電気や光などで構造を変化させる分子の創成
骨格に歪みをもつ分子は微小な刺激に対し、構造を柔軟に変化させます。電気や機械刺激を与えることで構造を変化させ、光や電気などをアウトプットとする機能性分子材料を作り出すことに成功しています。
押して歪む分子の創出
僅かな振動や圧力により構造自体を歪ませる分子はこれまで知られていません。我々は、曲面分子の柔軟な性質を活用し、押して歪む分子の創出を目指して研究を行っています。

極性結晶は圧力により電気を創出する「圧電効果」を示すことが知られています。我々はバネ構造を持つヘリセンによる世界初の極性結晶の創出に成功しました。
Chem. Asian. J. 2022, 17, e202200808.

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